すべてのモデルが最高のサウンドと機能を誇るSEQUENTIALシンセサイザー。数多くのモデルがラインナップされており、どれを選べば良いか迷ってしまうという声を多くいただいています。ここではSEQUENTIALシンセサイザーのそれぞれの特徴を1ページで解説しています。これからSEQUENTIALシンセサイザーの導入を検討されている方の参考になれば幸いです。
デモンストレーション動画はすべて、ミュージシャン、キーボード・プレイヤー、コンポーザー、プロデューサーなど、多方面でご活躍されている氏家克典氏による動画です。各機種の実際の使用感をプレイヤー目線でレビューされていますのでぜひご覧ください。
- ヴィンテージProphet-5を現代に蘇らせた「Prophet-5」「Prophet-10」
- ヴィンテージの名機を現代的にアレンジした6シリーズ「Prophet-6」「OB-6」「Trigon-6」
- Prophetの設計思想を受け継ぎ、圧倒的な16ボイスの同時発音数を誇る「Prophet Rev2」
- Prophetスタイルのシンセシス・エンジンとサンプル・インストゥルメントを融合「Prophet X」「Prophet XL」
- コンパクトなボディで可搬性に優れたProphetサウンドを受け継ぐ5ボイス・アナログ・ポリシンセ「TAKE 5」
- 3種類のフィルター、強力なモジュレーション・マトリクスとシーケンサーを搭載した、モンスター・モノフォニック・シンセ「PRO 3」「PRO 3 SE」
ヴィンテージProphet-5を現代に蘇らせた「Prophet-5」「Prophet-10」
- サウンドから外観に至るまで伝説のProphet-5を再現
- ヴィンテージRev1~3のフィルターを網羅、VINTAGEノブでヴィンテージ・シンセの挙動とサウンドを再現
- 10ボイス・バージョンのProphet-10は同時に2つのサウンドを演奏可能
伝説的なヴィンテージ・アナログ・ポリフォニック・シンセサイザーProphet-5。1970年台末から80年台にかけてRev1~Rev3がリリースされ、数多くの名盤でその素晴らしいサウンドが聞くことができる、アナログ・ポリフォニック・シンセサイザーの代名詞とも言える存在です。
2020年にリリースされた現行機種である「Prophet-5(Rev4)」と「Prophet-10」は、Prophet-5シリーズの正統的な最新モデルです。そのサウンドはもちろん、フロントパネル、ノブ、スイッチ、木製の外装に至るまで、オリジナルのProphet-5を再現。ボタンによりフィルターをRev1/2とRev3に切り替えられるので、ヴィンテージProphet-5をも網羅できる存在です。さらにVINTAGEノブを回せば、ボイス間のチューニングにばらつきが出て、ヴィンテージならではの「ゆらぎ」のあるサウンドを再現できます。
その名の通りProphet-5は5ボイス、Prophet-10は10ボイスの同時発音数です。Prophet-10だけの機能として、ファームウェア2.0から2つのレイヤー(プログラム)を重ねて演奏できる「スタックモード」、キーボードの左右で別々のレイヤーを演奏できる「スプリット・モード」が使用できます。また同時発音数を5ボイスに制限し、Prophet-5の挙動を再現することもできます。
Prophet-5、Prophet-10ともに音源モジュール・モデルもラインナップしています。
ヴィンテージの名機を現代的にアレンジした6シリーズ「Prophet-6」「OB-6」「Trigon-6」
- ヴィンテージ・サウンドを49鍵のコンパクトなボディに凝集
- Prophet-5のサウンドを再現した「Prophet-6」
- Oberheim SEMのサウンドを再現した「OB-6」
- 3VCOとラダー・フィルターのクラシック・サウンドを再現した「Trigon-6」
6シリーズはいずれも「6ボイスの同時発音数」「高品質な49鍵キーボード」「コンパクトなボディサイズ」「高品位なデジタル・エフェクト」「ポリフォニック・ステップ・シーケンサーと高機能アルペジエーター」といった共通の特徴を持っています。それぞれ1980年台を彩ってきた伝説的ヴィンテージ・シンセサイザーをオマージュしており、そのサウンドは各機種ごとに大きく異なります。あえて情報量が多い有機ELディスプレイを搭載せず、クラシックな3桁の7セグメント・ディスプレイを採用、ほぼすべてのパラメータがフロントパネルに配置されています。ヴィンテージ・シンセと同様に耳を研ぎ澄ませ、直感的な操作性で音作りに集中できます。
Prophet-5に搭載されている、ヴィンテージ・サウンドを再現するVINTAGEノブはTrigon-6に標準搭載。Prophet-6とOB-6も設定により、それぞれSLOPノブとDETUNEノブをVINTAGEノブとして使用できます。
各機種ともに音源モジュール・バージョンもラインナップ。さらに2台の同じシンセを接続する「ポリチェイン機能」を使用すると、同時発音数を2倍の12ボイスに拡張できます。(オーディオ信号は別途ミキサーでミックスする必要があります。)(※2023年1月時点でTrigon-6はモジュール・バージョンは未発売、ポリチェイン機能は実装されていません。)
Prophet-5のサウンドを再現した「Prophet-6」
「Prophet-5」の現代版といえるのが「Prophet-6」です。Prophet-5にインスパイアされたトゥルー・アナログのVCO、VCF、VCA、Prophet-5の音作りの重要な要素である「ポリモジュレーション」を搭載。ローパス・フィルターはProphet-5にインスパイアされたサウンドながら、2ポールと4ポールに切り替えが可能で音作りの幅が広がりました。ローパス・フィルターとは別にバンドサウンドやアンサンブルの中で手軽に低音の調整ができるハイパスフィルターも搭載。
サイドウッドとフロントウッドはProphet-5に近い色合いです。ヴィンテージProphet-5のファクトリー・プリセットを担当したJohn Bowenによる、Prophet-5を再現したプリセットも用意されています。
Oberheim SEMのサウンドを再現した「OB-6」
1980年台当時、Prophet-5のライバルともいえる存在であったOberheimシンセ。Prophet-5と同じくらい、数多くの名盤でそのサウンドを聴くことができるOberheimサウンドを現代に蘇らせたのが「OB-6」です。名器Oberheim SEMにインスパイアされた2ポールのステイト・バリアブル・フィルターを搭載。ステイト・バリアブル・フィルターはローパス - ノッチ - ハイパスへとフィルターの特性を連続可変でき、BPボタンでバンドパス・モードでも使用可能。このフィルターによる多彩なキャラクターのサウンドを作れるのが大きな特徴です。Prophet-6のポリモジュレーションに近いモジュレーションが可能な「X-MOD」を搭載し、音作りの幅をさらに広げます。
フロントパネルはOberheim OB-8やMatrix-12を想起させる、青いストライプ模様がプリントされています。サイドウッドもOberheim OB-8やMatrix-12に近い色合いで、サイドウッドのネジの取り付け方法も再現するというこだわりが光ります。
3VCOとラダー・フィルターのクラシック・サウンドを再現した「Trigon-6」
3つのVCOとラダー・フィルターを持つ、モノフォニック・シンセサイザーの代名詞とも言えるサウンドを、6ボイスのポリフォニックで実現したのが「Trigon-6」です。3つのVCOをデチューンさせ、クリーミーなラダー・フィルターを通した分厚いサウンドが特徴です。各オシレーターのレベルを上げると歪みが加わり、さらにFDBK<>DRIVEノブを使用すると過激なサウンドへ激変させることも可能。さらに3VCO x 6ボイスを重ねた18VCOによるユニゾン・サウンドは圧巻です。ポリモジュレーションを搭載し、音作りの幅をさらに広げます。
サイドウッドとフロントウッドは白いメープル材でライトな印象。フロントパネルはアーティスト/グラフィック・デザイナーのTYCHOことScott Hansen氏によるデザインです。
Prophetの設計思想を受け継ぎ、圧倒的な16ボイスの同時発音数を誇る「Prophet Rev2」
- アナログシンセとして脅威的な同時発音数の16ボイス
- 同時に2つのサウンドをスタック/スプリットして演奏できるバイティンバー
- 柔軟なモジュレーションが可能な8系統のモジュレーション・マトリクス
オシレーターにDCO(デジタル・コントロールド・オシレーター)を採用することで部品コストを大幅にコストダウン、アナログシンセながら16ボイスという脅威的な同時発音数を実現し、コストパフォーマンスに優れたモデルが「Prophet Rev2」です。同時発音数が半分の8ボイスのモデルもラインナップされていますが、8ボイスでも他のSEQUENTIALシンセサイザーを上回る同時発音数です。
なんといっても「バイティンバー」というレイヤーAとBに2つの異なるサウンドを保存できる設計が大きな特徴です。2つのレイヤー(プログラム)を重ねて演奏できる「スタックモード」、キーボードの左右で別々のレイヤーを演奏できる「スプリット・モード」を使用できます。16ボイス・モデルであればレイヤーごとに8ボイスも使用できるので、リリースの長いパッド・サウンドも音切れの心配なく余裕で演奏できます。
フィルターにはボイスごとに 2/4 ポールのローパス・レゾナント・カーティス・フィルターを搭載。Prophet-5に迫る大胆でパンチのあるサウンドを生み出します。柔軟なモジュレーションを実現する「モジュレーション・マトリクス」は8系統を同時に使用でき、数多くのソースとデスティネーションを接続することでモジュラーシンセのような音作りが可能です。
レイヤーごとにデジタル・エフェクトを搭載。リバーブ、ディレイ (標準ディレイと BBD ディレイ)、コーラス、フェイズ・シフター、リングモジュレーター、ディストーションが使用できます。
またProphet Rev2は、2010年台の多くの著名なアーティストに愛用されてきた「Prophet`08」の後継機種です。現代的なアナログ・ポリシンセとして確固たる地位を築いたProphet`08の設計思想、そのサウンドと使いやすさを受け継いでいます。
Prophet Rev2は音源モジュール・バージョンもラインナップ。キーボードモデルと同様に8ボイス・バージョンと16ボイス・バージョンがあります。
Prophetスタイルのシンセシス・エンジンとサンプル・インストゥルメントを融合「Prophet X」「Prophet XL」
- サウンド・ライブラリー・デベロッパー「8Dio」による150GBのサンプル・ライブラリーを内蔵
- ヴィンテージ・デザインをベースにした -24dB/Oct の新しいレゾナント・ローパス・フィルターを搭載
- クラシックなシンセサウンドからサンプル・インストゥルメントを活かしたシネマティック・サウンドまで幅広いサウンド
楽器の繊細な奏法まで再現する"ディープサンプリング"のパイオニア「8Dio」による150GBのサンプル・ライブラリー150GBのサンプル・ライブラリーを内蔵。他のSEQUENTIALシンセでは演奏することができない、ピアノ、ギター、ストリングスといったリアルな「生楽器」のサウンドも演奏できるのが「Prophet X」「Prophet XL」最大の特徴です。サンプル・ライブラリーは生楽器以外にも複雑なパッドサウンド、サウンド・エフェクト、テクスチャー・サウンドなど、あらゆるサウンドを網羅しています。さらに2基の高解像度デジタル・オシレーターを搭載しており、アナログ・オシレーターでは再現できない複雑な倍音を持つサウンドも生成できます。
フィルターはヴィンテージ・デザインをベースにした -24dB/Oct の新しいレゾナント・ローパス・フィルターを搭載。ステレオ・モードでは左右で別々のフィルターを配置して、真のステレオ・シグナル・パスを実現し、広がりのあるサウンド奏でることができます。同時発音数はステレオの8ボイス・モード、モノラルの16ボイス・モード(フィルターのOn/Offを選択可能)、擬似ポリフォニックの32ボイス・モード(レイヤーごとに1つのインストゥルメント、オシレーター、すべてのボイスが1つのステレオペアのフィルターを通過)を必要に応じて使い分けることができます。
「バイティンバー」でレイヤーAとBで2つの異なるサウンドを使用できます。2つのレイヤー(プログラム)を重ねて演奏できる「スタックモード」、キーボードの左右で別々のレイヤーを演奏できる「スプリット・モード」を使用できます。
レイヤーごとに2つのデジタル・エフェクトを搭載。ステレオ・ディレイ, BBD ディレイ、コーラス、フランジャー、フェイザー、ヴィンテージ・ロータリー・スピーカー、ディストーション、ハイパス・フィルター、スプリング・リバーブ、プレート・リバーブが使用できます。
61鍵キーボードのProphet Xと、76鍵セミウェイテッド・キーボードのProphet XLをラインナップ。どちらもサウンド・エンジンは同じで、キーボードの鍵盤数とタイプが異なります。
デジタル・オシレーターとアナログ・フィルターを使用して伝統的なシンセサイザーとして、繊細な生楽器のサウンドやシネマティック・サウンドまで幅広いサウンドをカバーするステージ・キーボードとして、さらにそれらを融合した新次元の音作りまで可能なシンセサイザーとして、Prophetという枠を超越する一台です。
コンパクトなボディで可搬性に優れたProphetサウンドを受け継ぐ5ボイス・アナログ・ポリシンセ「TAKE 5」
- Prophetサウンドをどこでも演奏できる、もう一つの「5」ボイス・アナログ・ポリフォニック・シンセサイザー
- コンパクトなボディに44鍵キーボードを搭載、ロースプリット機能で広い音域をカバー
- 2つのアナログVCOとProphet-5 Rev4の血統を受け継ぐパワフルな4ポール・アナログ・フィルターを搭載
Prophet-5を受け継ぐサウンドを手軽に外へ持ち出して演奏できる、可搬性と演奏性を両立させたモデルが「TAKE 5」です。2つのアナログVCO、Prophet-5 Rev4の血統を受け継ぐパワフルな4ポール・アナログ・フィルターを搭載し、妥協のないProphetサウンドを演奏可能。小型ながら44鍵フルサイズの高品質なキーボードを搭載し、7.7Kgという軽さを実現しています。TAKE 5独自の「ロースプリット機能」を使用すると、44鍵のうち、下の12鍵(1オクターブ)を1オクターブ下へトランスポーズするといった使い方も可能。44鍵という鍵盤数を超えた幅広い音域を演奏できます。
モジュレーション・マトリクスは最大16系統を使用できるので、本格的なモジュラー・シンセサイザーに迫る音作りも可能です。モジュレーション・ソースのひとつであるLFOはサウンド全体へ影響する「グローバルLFO」と、ボイスごと搭載され別々に動作する「パーボイスLFO」の2種類を搭載。特筆すべきは「パーボイスLFO」で、ボイスごとに異なる位相の周期的な変化を加えることができるのが特徴です。
現代的なデザインながらVINTAGEノブを搭載しており、Prophet-5と同様にヴィンテージ・シンセの挙動とサウンドを再現することもできます。
1系統のマルチエフェクトと1系統のリバーブ、合計2系統のデジタル・エフェクトを搭載。ヴィンテージ・サウンドに彩りを加えます。
TAKE 5はその名前が示す通り、持ち運ぶことを考えて設計されたコンパクトなモデルです。Prophet-5を受け継ぐ本格的なアナログ・サウンドを、どこへでも連れて行って演奏することができます。
3種類のフィルター、強力なモジュレーション・マトリクスとシーケンサーを搭載した、モンスター・モノフォニック・シンセ「PRO 3」「PRO 3 SE」
- 2つのアナログVCO、1つのデジタル・ウェーブテーブル・オシレーター、Prophetタイプ、Oberheimタイプ、ラダー・タイプの3種類のフィルターを搭載したモノフォニック・シンセ
- SEQUENTIALシンセの中で最もパワフルなステップ・シーケンサーを搭載
- CV/Gate入出力を搭載し、ユーロラック・モジュラー・シンセサイザーとの相性が抜群
「PRO 3」「PRO 3 SE」はSEQUENTIALシンセサイザーの中で唯一のモノフォニック・シンセサイザーです。モノフォニックとは「同時発音数が1音」という意味で、主にシンセベースやリード・サウンド、内蔵アルペジエーターやシーケンサーを使用したリズミカルなフレーズを奏でるのに向いています。そのサウンドと機能は現行のモノフォニック・シンセで最強と言えます。
また「パラフォニック」という発音モードがあり、複数のキーボードを弾くと各オシレーターが1,2,3,と順番に発音して3和音まで演奏できる、擬似ポリフォニック機能も搭載。
クラシックな2つのアナログVCOに加えて、非常に幅広いサウンド・バリエーションを持つデジタル・ウェーブテーブル・オシレーターも搭載。フィルターはProphetタイプ、Oberheimタイプ、ラダー・タイプから選択して使用することができ、「6」シリーズとほぼ同等のすべてのフィルターを1台で使用できます。
モジュレーション・マトリクスの数はSEQUENTIALシンセで最多の32系統。この一台の中で巨大なモジュラー・シンセ並みの複雑な音作りを楽しめます。さらにPRO 3は4つのCV入力、4つのCV出力、1つのGate出力を搭載しているので、外部のモジュラー・シンセサイザーやCV/Gate搭載機器とも組み合わせて、無限の音作りが可能です。
PRO 3の大きな特徴の一つがSEQUENTIALシンセで最もパワフルなシーケンサーです。16トラックを同時に再生でき、ノート情報だけでなく、ほぼ全てのパラメータをシーケンスさせることができます。CV/Gate出力を利用して、外部のモジュラー・シンセサイザーやCV/Gate搭載機器をコントロールすることもできます。
2つのデジタル・エフェクトを搭載し、ステレオ・ディレイ、BBD ディレイ、コーラス、フランジャー、フェイザー、リング・モジュレーション、ヴィンテージ・ロータリー・スピーカー、ディストーション、ハイパス・フィルター、スーパー・プレートリバーブを使用できます。
PRO 3は樹脂製のサイドパネルのスタンダード・モデルです。PRO 3 SEはウォルナット製ウッドパネルと3段階で角度を調節できるチルトアップ式のフロント・パネルを搭載したスペシャル・エディションです。サウンド・エンジン、ノブやボタンなどのコントロール、キーボードはどちらも同じですが、ボディの作りが大きく異なります。重量はPRO 3は7.25Kg、PRO 3 SEは12.25Kgと5Kgも違います。外へ持ち運ぶ機会が多い場合はPRO 3を、スタジオで据え置いて使用する場合はPRO 3 SEをおすすめします。