Sequential 創立 50周年を記念して、Sequential Circuits の歴史を深く掘り下げた『The Prophet from Silicon Valley』の著者 David Abernethy(デビッド・アバネシー)氏によるゲスト投稿をご紹介します。アバネシー氏は、この本の取材中に個人的な経験から得た舞台裏の独占的な洞察を披露しています。これは、啓発的な3部構成シリーズの第2部です。
『The Prophet from Silicon Valley』の知られざる物語 パート2
DSI の黎明期、Dave Smith(デイヴ・スミス)氏は、象徴的な楽器である Prophet-5 を新しい楽器として再現することは考えていないとよく言っていた。彼は、デジタルとアナログの電子機器の最新の技術の組み合わせは、過去のものを再現するよりも興味深い楽器になると感じていました。
しかし、ヴィンテージ・オリジナルの価格上昇し、信頼性の低さ、スペアパーツが減っているなど、新しい Prophet が求められていた。DSI は 2008 年に Prophet '08 で Prophet の名前を使い始め、その後も先進的な機能を搭載した Prophet のようなシンセサイザーを数多く製造した。そして、2014 年に Roland(ローランド)の創業者である掛橋郁太郎氏の提案により、ヤマハは 1987 年に買収したSequential ブランドの権利を Dave Smith に返還しました。
一方、業界ではレトロ・ブームが盛んで、ヴィンテージ楽器を再現する会社が増えていました (Korg の ARP Odyssey や MS-20、Moog の Minimoog Model D、Taurus 3、Moog One などが最近の例で、多数のモジュラー システムも忘れてはならない)。新しいチップ・メーカーが古い SSM や CEM チップセットの再生産に乗り出し、Moog、Roger Linn、Oberheim といった古いブランドの多くが息を吹き返した。Sequential Circuits も復活しないわけがない。
そして 2015年、DSI は Sequential Prophet-6 をリリースした。2018年 までに DSI ブランドは完全に廃止され、会社は Sequential となった。最新の製造方法と新しいチップセットにより、Prophet-5 の再現は可能となった。そして 2021年、 Sequentia は Prophet-5 Rev 4 をリリースした。
Sequential Circuits に夢中になり、拙著『The Prophet from Silicon Valley』を執筆するために研究を重ねる中で、私は MaxとProphet 600 以外のあらゆる Sequential Circuits の楽器やガジェットを手に入れた。ラッキーなことに、私の親友である Steve(スティーブ)(別名:Alex Graham(アレックス・グラハム)/ the retro drum machine Book の著者)がこの2つの楽器を持っていたので、私は間近でそれらを研究したり写真を撮ったりすることができた。そしてまたまたラッキーなことに、スティーブは新品の Prophet-5 Rev 4 をも購入した。このブログに寄稿するチャンスが巡ってきたとき、私は『比較テストをしてみよう』と思った。この手のことはこれまでにも何度も行われてきたと思うが、せっかくだからちょっと楽しんでみよう。ということで私は、スティーブのところへヴィンテージの Rev 2 と Rev 3を運び、Rev 4 と対決させた。何か問題があるものなのか?
まあ、何も問題はなかったよ。3台ともすべて完璧に動作したし、3つの音がとても似ていることにとても驚いた。私たちは、昔から気に入っている「Sync 1」から始めて、ファクトリー・プリセットをいくつか調整した。ラッキーなことに、Rev 4 にはオリジナルの 40個 のファクトリー・プリセットが備わっていたり、Rev 2 と 3 のオリジナル・パッチ・シートも持っていた。他にもいくつかのサウンドを試したが、明らかに違いがあると感じた場合は、ノブ(通常はフィルター・カットオフやオシレーター)を微調整することで、他の2つと同じサウンドにすることが簡単にできた。
一般的な認識では、Rev 2 の Prophet のサウンドには、ある種の 「ざらざら感」や「汚れた感じ」があり、Rev 3 はより 「洗練されている 」と言われている。私もそう思う。でも、Rev 2 は甘く、Rev 3 は荒々していることもある。3台とも似たような音ではあるけれど、それぞれの個性があるのは確かで、愛すべき名前を付けられそうなほどだ......いや、つけないかもしれない......でも、『Rev 2 の音は2つとして同じものはない』とか、『Rev 3 の音は2つとして同じものはない』というようなことをよく耳にする。当時のアナログ・エレクトロニクスと製造方法の許容範囲を考えれば、驚くことではありません。
しかし、この比較テストのためにそのような細かいディテールに労力を費やしたくはなかった。本質は、Prophet-5の個性、進化、そして長寿を称えることだったからだ。3台のマシンは Prophet-5 だが、異なるリビジョンだ。Rev 4 には『Vintage』というノブが追加されているんだ。これには面を食らった。Rev 2 と 3 を設計していた当時のデイヴ・スミスが『Future』ノブが必要だと考えていたことが想像できたからね。
こうして、Prophet-5 は生き続けている。しかし悲しいことに、デイヴ・スミスは翌年の 2022 年に亡くなってしまった。2024 年は、Sequential Circuits の創立 50 周年にあたります。同社は 1974 年から 1987 年にかけて一定の期間を過ごし、象徴的な Prophet-5 やその他の画期的な楽器を数多く生み出し、ローランドと共同で MIDI を開発しました。このような歴史的に重要な会社の現在の姿に万歳。おめでとう、Sequential!
デビッド・アバネシー 2024年1月
デビッド・アバネシー 氏の 『The Prophet from Silicon Valley(洋書)』は、 Sequential Circuits の決定版とも言える歴史書です。Sequential の象徴的な機器とその背後にいるイノベーターたちの魅力的な詳細が詰め込まれた、この本(洋書)はAmazon で購入することができます。