A-101-1V

A-101-1 Vactrol Multitype Filter はバクトロール回路を使用した LP/BP/HP マルチタイプ・フィルターです。このモジュールは A-100 システムで初めてバクトロールを使用したモジュールです。

バクトロールとは

バクトロールとは LDR（Light Depending Resistor）と LED（Light Emitting Diode）を組み合わせたもので、耐光性のある小さなケースに入っています。LED の輝度を上げると、LDR の抵抗値が下がります。この効果は、目的の機能を得るために可変抵抗器を必要とする回路（例 : VCF、VCA、VC フェイザー、VC トリガー・ディレイ、VC スルー・リミッター、VC エンベロープ・ジェネレーター、VC LFO、VCO など）に利用することができます。他の方法（可変抵抗器としての OTA、ダイオード、トランジスタ、FET など）と比較した場合のバクトロールの利点は、通常のオーム抵抗のように振る舞い、歪みを発生させずに高電圧を扱うことができる点です。これが、バクトロール・ベースの回路のサウンドが「ソフト」または「メロウ」と表現される理由です。欠点はコストが高いことと、LED の電流と LDR の抵抗値の間に正確なコヒーレンス（干渉のしやすさ）が定義されていないことです。各バクトロールは、LED 電流が増加すると LDR 抵抗が減少しますが、機械的および電気的な公差により、個体ごとにバクトロールの動作は少し異なります。（例 : LED と LDR の位置関係や距離、同じ電流でも LED の明るさが異なるため。）

A-101-1 の特徴

A-101-1 は Nyle A. Steiner のアイデア(Electronic Design, issue 25, December 1974, page 96 ff に掲載)に基づく特殊なマルチタイプ・フィルターです。回路は、標準的な非反転アンプリファイア・フィルターの設計を使用しています。異なるタイプのフィルター（ローパス/LP、バンドパス/BP、ハイパス/HP）は、回路の異なるポイントにオーディオ信号を入力し、すべてのフィルター・タイプに共通の出力を使用することで実現しています。3つの異なるオーディオ信号を同時にフィルターに入力することができます。各信号はそれぞれ対応するフィルターでフィルタリングされ（LP、BP、HP）、フィルタリングされた3つの信号の合計が出力されます。もちろん、3つの入力に同じ信号を入力することも可能です。この場合、LP/BP/HP の3つの入力アッテネーターの設定により、LP/BP/HP の異なる組み合わせが得られます。設定によりノッチ・フィルターとしても使用可能です。（Nyle A. Steiner のオリジナル・デザインでは使用できません。）フィルター入力は内部で接続されており、BP In は BP ジャックにケーブルが接続されていなければ LP ジャックに接続されます。（HP In、BP In も同様です。）

Nyle A. Steiner のオリジナル回路とは対照的に、フィルターのフリーケンシー・コントロールのための可変抵抗器として、ダイオードの代わりにバクトロールが使用されています。バクトロールの「曲がった」応答により、フィルターは正確なフリーケンシー・コントロールの基準（V/Octのような）を持っていません。異なるバクトロールの間で必然的に生まれる公差は、各モジュールのそれぞれのサウンドとそれぞれのレゾナンスの挙動につながります。レゾナンス・コントロールもバクトロールで実現しており、このパラメーターも CV でコントロールできます。レゾナンスは自己発振するまで上げることができます。レゾナンスのコントロールにより発生する自己発振は、バクトロールの許容誤差のため、フィルター・フリーケンシーによって異なる場合があります。

このモジュールの特徴はオーディオ出力が2つある点です。Out 1 はオリジナル回路の出力です。Nyle A. Steiner のオリジナル回路では、出力レベルがレゾナンスに大きく依存していました。（レゾナンスが大きい = 出力レベルが大きい。）Out 2 は、レゾナンスをコントロールするバクトロールに直列に接続された、追加のバクトロールを使用することでこの挙動を補正しています。この追加のバクトロールはアッテネーター（またはシンプルな VCA）として機能し、レゾナンスを高く設定した場合のレベルの上昇を補正します。

2つの LED は現在のフリーケンシーとレゾナンスの設定を表示します。LED はバクトロール内の LED と直列に接続されており、バクトロール内の LED の明るさを表示します。